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2024年5月21日

Linux 6.1からLinux 6.6に手抜き更新したらハマった

目次: 自宅サーバー

Linux Kernelのlongtermバージョンが代替わりしてからしばらく経ちますが、更新をサボりにサボっていました。重い腰を上げて自宅サーバーのLinux 6.1をLinux 6.6に更新したところ、起動しなくなりました。悲しい。

Linux 6.1に戻せば起動しますからHWの故障などではないです。Kernelコンフィグが悪さをしていそうで、ドライバの有無を色々疑ったんですが、結果的にはCONFIG_UNIXがtristate(設定値にy/n/mを取れる)からbool(設定値にy/nを取れる)が原因でした。こんな経緯で起動しなくなったと思われます。

  • ある時点(※)でCONFIG_UNIXをmにできなくなった
  • menuconfigはCONFIG_UNIX=mにできないので、CONFIG_UNIX=nにする
  • Unixドメインソケットが使えないKernelが爆誕
  • 何ひとつ(systemdすら)起動できない

CONFIG_UNIX=mにできなくなったことなんて知りませんでした。気づけたのはmake oldconfigのおかげです。

make oldconfigが出すエラー
# make oldconfig

.config:917:warning: symbol value 'm' invalid for UNIX    ★★エラーが出ている★★
*
* Restart config...
*
*
* Configure standard kernel features (expert users)
*
Configure standard kernel features (expert users) (EXPERT) [N/y/?] n
  Load all symbols for debugging/ksymoops (KALLSYMS) [Y/?] y
    Test the basic functions and performance of kallsyms (KALLSYMS_SELFTEST) [N/y/?] (NEW)

私がいつもやっている手順ですと

  • 古いLinux Kernelのconfigを新しいLinux Kernelにコピー
  • make menuconfig

こんな感じなので、最初はCONFIG_UNIX=mに対するエラーに全く気づいていませんでした。もしmake oldconfigが存在しなかったら迷宮入りしていたと思います。

どこで変わったのか?

せっかくなので仕様が変更されたポイントを調べます。git annotateでnet/unix/Kconfigを見て、変更のもとになったコミットを調べます。コミットログは下記です。

CONFIG_UNIXがtristateからboolになったコミット
commit 97154bcf4d1b7cabefec8a72cff5fbb91d5afb7b
Author: Alexander Mikhalitsyn <alexander@mihalicyn.com>
Date:   Thu Jun 8 22:26:28 2023 +0200

    af_unix: Kconfig: make CONFIG_UNIX bool

    Let's make CONFIG_UNIX a bool instead of a tristate.
    We've decided to do that during discussion about SCM_PIDFD patchset [1].

    [1] https://lore.kernel.org/lkml/20230524081933.44dc8bea@kernel.org/

...以下略...

このコミットが本線に取り込まれたのはLinux 6.5みたいです。

コミットが取り込まれたバージョン探し
$ cd linux
$ git log v6.4...v6.5 | grep 97154bcf4d1b7

commit 97154bcf4d1b7cabefec8a72cff5fbb91d5afb7b

ちなみにLinux 6.1の次のLongterm kernelはLinux 6.6ですから、今日でなくてもいつか私はこの問題にハマる運命だったと言えましょう……。

編集者:すずき(2024/05/23 23:19)

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2024年5月26日

JTSA Unlimited大会参加2024

目次: 射的

JTSA Unlimitedの大会に参加しました。去年は選手登録をし忘れる痛恨のミスで参加できませんでしたが、今年は忘れずに登録&参加できました。

「木」ステージだけ全然ダメダメでしたが全体的に良い調子だったためか、結果は76.75秒で自己ベストを更新しました。実は大会で自己ベストが出る人は練習不足である説もありますが、そもそもガチ勢じゃないしあまり気にしても仕方ないでしょう。


JTSA Unlimited練習会+大会の記録

練習会の記録を見ても80秒を切るか切らないか……程度でフラフラしていてあまり早くなっている感じはしません。来月からはLimitedが始まるのでゆるゆると続けていくとしましょう。

編集者:すずき(2024/07/05 10:34)

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2024年5月27日

Hello Yocto

目次: Yocto

Yoctoのメモです。なおYoctoのバージョンはScarthgap(5.0.1)とします。他のバージョンだと当てはまらない場合があります。

買ったのに使ってないZybo Z7-20を使おうと思い立ったものの、XilinxのARMコアでLinuxを動かすときはPetaLinuxというYoctoの改造ツールを使うらしいです。ベースとなったYoctoもbitbakeコマンドを実行する程度の知識しかないのでPetaLinuxと並行してYoctoも調べたいと思います。

YoctoのQuick Build(Yocto Project Quick Build - The Yocto Project)なるドキュメントによればビルド方法はたったこれだけです。

Yoctoのビルド方法
$ source oe-init-build-env
$ bitbake core-image-sato

正常に動いているうちは良いですが、まともに動かなくてデバッグするときはYoctoの超複雑なシステムが災いをもたらします。bitbakeって何?どこを見たら良いの?全くわかりません。

次回からYoctoを破壊&直しながら、Yoctoを構成する要素を調べていこうと思います。

編集者:すずき(2024/06/03 23:46)

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2024年5月28日

Yoctoのセットアップスクリプトとビルドディレクトリ

目次: Yocto

Yocto Scarthgap(5.0.1)のメモです。Yoctoの使い方は以下の2手でした。

Yoctoのビルド方法
$ source oe-init-build-env
$ bitbake core-image-sato

今回は最初のsource oe-init-build-envを調べます。Yoctoのドキュメント(Source Directory Structure - The Yocto Projectの4.1.10 oe-init-build-env)によると、OpenEmbeddedのビルド環境をセットアップし、ビルドディレクトリを作成するスクリプトです。

コードを読んで依存関係を調べるのは時間が掛かるし辛いので、簡易的な調査手法として全ファイルを消してエラーを観察し、エラーの原因となるファイルを復活させて次ステップに進める手法で調べます。調べた結果oe-init-build-envを実行するには、

  • scripts/oe-buildenv-internal
  • scripts/oe-setup-builddir

が必要です。2つ目のoe-setup-builddirスクリプトによりビルドディレクトリが作成されます。次回はビルドディレクトリはどこから来るのか?を紹介します。

編集者:すずき(2024/06/04 00:02)

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2024年5月29日

Yoctoのビルドディレクトリとテンプレートディレクトリ

目次: Yocto

Yocto Scarthgap(5.0.1)のメモです。Yoctoの使い方は以下の2手でした。

Yoctoのビルド方法
$ source oe-init-build-env
$ bitbake core-image-sato

テンプレートディレクトリを元にしてビルドディレクトリ(正確にはbuild/confディレクトリ)を作成します。Yoctoのドキュメント(Creating a Custom Template Configuration Directory - The Yocto Project)によると、テンプレートディレクトリのパスはTEMPLATECONF環境変数で指定できるとあります。

もし何も設定しないと.templateconfファイル内に書かれた設定をデフォルトの設定として使います。内容はこんな感じです。

テンプレートディレクトリの位置が書かれた.templateconfファイル
$ less .templateconf

# Template settings
TEMPLATECONF=${TEMPLATECONF:-meta-poky/conf/templates/default}

テンプレートディレクトリの中にあるファイルはこんな感じ。

テンプレートディレクトリ内のファイル一覧
$ ls meta-poky/conf/templates/default/

bblayers.conf.sample  conf-summary.txt   local.conf.sample.extended
conf-notes.txt        local.conf.sample  site.conf.sample

テンプレートファイルからビルドディレクトリを作成する際は、単なるコピーではなく##OEROOT##のような変数をパスに展開した内容がコピーされます。下記はOEROOTの展開例です。

テンプレートファイルの展開例

$ diff -u meta-poky/conf/templates/default/bblayers.conf.sample build/conf/bblayers.conf

--- meta-poky/conf/templates/default/bblayers.conf.sample       2024-05-30 13:17:58.926938821 +0900
+++ build/conf/bblayers.conf    2024-05-31 14:58:51.741378271 +0900
@@ -6,7 +6,7 @@
 BBFILES ?= ""

 BBLAYERS ?= " \
-  ##OEROOT##/meta \
-  ##OEROOT##/meta-poky \
-  ##OEROOT##/meta-yocto-bsp \
+  /home/katsuhiro/share/projects/oss/poky/meta \
+  /home/katsuhiro/share/projects/oss/poky/meta-poky \
+  /home/katsuhiro/share/projects/oss/poky/meta-yocto-bsp \
   "

ぱっと見だとテンプレートディレクトリの場所はどこでも良さそうですがそんなことはありません。テンプレートがpoky/meta-poky/conf/templates/defaultだとしたら、

テンプレートディレクトリを配置できる場所の条件
poky/meta-poky/conf/templates/
の2つ上のディレクトリの下のconf/layer.confすなわち、
poky/meta-poky/conf/layer.conf
が必要です。

一言で言えばテンプレートがあるディレクトリの2つ上(Yoctoを例にすればmeta-poky)にconf/layer.confが存在しないエラーですが、そんな制約知らんわー……。

ちなみにテンプレートディレクトリを作成する場合は手で作成するのではなく、bitbake-layers save-build-confコマンドを使用するそうです(ドキュメント参照)。

ビルドディレクトリの中身

セットアップディレクトリによって、ビルドディレクトリbuildが生成され、BBPATHとBUILDDIRがビルドディレクトリを指すようになります。ビルドディレクトリ下には、テンプレートディレクトリからbuild/confディレクトリが生成されます。ファイルの中身を見ると、

ビルドディレクトリ内の設定ファイルの内容
#### build/conf/bblayers.conf

# POKY_BBLAYERS_CONF_VERSION is increased each time build/conf/bblayers.conf
# changes incompatibly
POKY_BBLAYERS_CONF_VERSION = "2"

BBPATH = "${TOPDIR}"
BBFILES ?= ""

BBLAYERS ?= " \
  /home/katsuhiro/share/projects/oss/poky/meta \
  /home/katsuhiro/share/projects/oss/poky/meta-poky \
  /home/katsuhiro/share/projects/oss/poky/meta-yocto-bsp \
  "


#### build/conf/conf-notes.txt

### Shell environment set up for builds. ###

You can now run 'bitbake <target>'

Common targets are:
    core-image-minimal
    core-image-full-cmdline
    core-image-sato
    core-image-weston
    meta-toolchain
    meta-ide-support

You can also run generated qemu images with a command like 'runqemu qemux86-64'.

Other commonly useful commands are:
 - 'devtool' and 'recipetool' handle common recipe tasks
 - 'bitbake-layers' handles common layer tasks
 - 'oe-pkgdata-util' handles common target package tasks


#### build/conf/conf-summary.txt

This is the default build configuration for the Poky reference distribution.


#### build/conf/local.conf

(設定項目がたくさんある、ここでは省略)


#### build/conf/templateconf.cfg

meta-poky/conf/templates/default

セットアップスクリプトの時点でもシステムの複雑さの片鱗が見え隠れしています。まともにコードで追うのを諦めて正解でした。そんなことしていたら日が暮れてしまいます。今回登場したファイル、ディレクトリは、

  • poky/oe-init-build-env
  • poky/.templateconf
  • poky/meta-poky/conf/templates/default/*
  • poky/meta-poky/conf/layer.conf
  • poky/build/conf/*

こんなもんでしょうか。次回はいよいよbitbakeに突入です。

編集者:すずき(2024/07/05 10:34)

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