前回(2022年3月17日の日記参照)同様に自治体の接種会場に行きました。ワクチンは前回同様にモデルナ製です。
時期的には5回目の接種時期ですが、私はうっかりしていて1回行くのを忘れてしまい、今回が4回目の接種です。いつもながら看護師を始めとした医療従事者の皆様は非常に親切かつ効率的に働いていました。ありがてぇことです。
マメな世の中の人はみな5回目の接種だからか、接種会場では「5回目の接種でよろ……あら?4回目です?」って2度ほど聞かれました。ワクチンって打つ人は毎回打つし、打たない人は全然打たないのかなあ?
COVIDのワクチンは他のワクチンと比べると副作用が結構強いですよね。熱は解熱剤で何とかなるんですが、とにかく肩が痛い。
目次: RISC-V
最近はRISC-Vのシングルボードコンピュータ(SBC)が市販されています。嬉しい時代になりました。これからのお買い物の参考としてリストアップしました。
目次: ベンチマーク
FizzBuzzの実装は簡単ですが、可能な限り高速に出力しようとするとなかなか面白い遊びになります。今回は実装の改善ではなく、コンパイラを変えたらどうなるか試しました。gccとclangのどちらが速いかは場合によるみたいで、一筋縄ではいかないです。
ソースコードが散らかっていたので再整理し、実装も少し見直してシンプルにしています。最適化のアイデアや仕組みは今まで解説した通りです。
各最適化のアイデアは基本的に独立しており順不同で適用できますが、いくつか依存関係があります。
自分で実装してみたい人以外は気にしなくて良いと思います。
省電力PCの測定環境は、
デスクトップPCの測定環境は、
です。
全てのログを載せると大変なことになるので、clang -O3かつ省電力PC(CPU: Pentium J4205)で測定した結果のみを載せます。
# clang 20231019_fizzbuzz_simple.c -msse4 -O3 33.3GiB 0:07:38 [74.5MiB/s] [ <=> ] real 7m38.004s user 7m31.530s sys 0m50.762s # clang 20231019_fizzbuzz_base.c -msse4 -O3 33.3GiB 0:00:59 [ 573MiB/s] [ <=> ] real 0m59.485s user 0m58.090s sys 0m4.266s # clang 20231019_fizzbuzz_30.c -msse4 -O3 33.3GiB 0:00:56 [ 606MiB/s] [ <=> ] real 0m56.258s user 0m54.688s sys 0m4.597s # clang 20231019_fizzbuzz_offset.c -msse4 -O3 33.3GiB 0:00:16 [2.01GiB/s] [ <=> ] real 0m16.548s user 0m15.406s sys 0m3.040s # clang 20231019_fizzbuzz_div10.c -msse4 -O3 33.3GiB 0:00:09 [3.40GiB/s] [ <=> ] real 0m9.804s user 0m8.510s sys 0m3.004s # clang 20231019_fizzbuzz_sse.c -msse4 -O3 33.3GiB 0:00:04 [7.36GiB/s] [ <=> ] real 0m4.528s user 0m3.856s sys 0m1.875s
コンパイラの種類も変えて測定した結果を載せます。Pentium J4205でSSE版の実装を連続で実行すると負荷が掛かりすぎる(?)のか、サーマルスロットリングに引っかかるのか、極端に速度が低下してしまうことがあるため、30秒くらい間を空けて実行しています。
FizzBuzzの種類 | Pentium, GCC -O3 | 倍率 | Pentium, clang -O3 | 倍率 | Ryzen, GCC -O3 | 倍率 | Ryzen, clang -O3 | 倍率 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
単純 | 452.839 | - | 458.004 | - | 100.475 | - | 101.528 | - |
独自itoa | 61.995 | x7.3 | 59.485 | x7.7 | 13.547 | x7.4 | 12.737 | x8.0 |
30個まとめ | 39.064 | x11.6 | 56.258 | x8.1 | 8.969 | x11.2 | 13.600 | x7.5 |
オフセット0xf6 | 10.071 | x45.0 | 16.548 | x27.7 | 2.097 | x47.9 | 4.114 | x24.7 |
1桁落とし | 7.687 | x58.9 | 9.804 | x46.7 | 1.684 | x59.7 | 2.712 | x37.4 |
SSE版 | 5.319 | x85.1 | 4.528 | x101 | 1.723 | x58.3 | 1.468 | x69.2 |
FizzBuzzの種類 | Pentium, GCC -Os | 倍率 | Pentium, clang -Os | 倍率 | Ryzen, GCC -Os | 倍率 | Ryzen, clang -Os | 倍率 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
単純 | 515.882 | - | 457.593 | - | 101.853 | - | 102.073 | - |
独自itoa | 151.588 | x3.4 | 89.760 | x5.1 | 20.747 | x5.0 | 17.753 | x5.8 |
30個まとめ | 60.041 | x8.6 | 55.899 | x8.2 | 10.551 | x9.7 | 13.905 | x7.3 |
オフセット0xf6 | 21.828 | x23.6 | 15.536 | x29.5 | 4.836 | x21.1 | 3.666 | x27.8 |
1桁落とし | 16.237 | x31.8 | 9.902 | x46.2 | 4.787 | x21.3 | 2.456 | x41.6 |
SSE版 | 4.870 | x106 | 4.670 | x98.1 | 1.603 | x63.5 | 1.478 | x69.1 |
最速はclang -O3でしたが、常にclangの生成するコードが速い訳でもなければ、場合によってはO3がOsより遅くなることもありまして最適化の奥深さを感じます。
ソースコードはこちらからどうぞ。
目次: ベンチマーク
FizzBuzzの実装は簡単ですが、可能な限り高速に出力しようとするとなかなか面白い遊びになります。以前紹介(2023年9月22日の日記参照)したオフセット0xf6アルゴリズム(仮)ですが、一番下の1桁を固定文字列と見なして削減するとさらに速くなります。
思いついたときは大して速くならないと予想しましたが、実装してみると意外に効き目がありました。やってみるものですね。せっかくなのでここに書き残しておきます。
FizzBuzzは15個を1つの単位として同じパターンが出現します。桁上がりを考えて30個を1単位とする最適化が良い、ことを自作アルゴリズムの紹介(2023年9月21日の日記参照)で説明しました。
さらに特定の桁数を狙い撃ちで最適化しましたが、オフセット0xf6アルゴリズム(仮)と相性が良くないようで残念ながら速くなりませんでした(2023年10月1日の日記参照)。
特定の桁数に依存しないように改良したのが今回紹介する方法です。名前がないと不便なので以降「1桁落とし」と呼びます。
その名の通り1桁減らした数 = 10で割った数を使います。30個単位で処理するときに数値を30ずつ増やしましたが、1桁落としでは3ずつ増やします。
なくなってしまった一番下の桁はFizzやBuzzと同様に固定的に出現する文字列として出力して補填します。何を言っているのか分かりにくいと思うので適当な数(1021〜1050)を例に考えましょう。
102: ...1\n...2\nFizz\n...4\nBuzz\nFizz\n...7\n...8\nFizz\nBuzz\n 103: ...1\nFizz\n...3\n...4\nFizzBuzz\n...6\n...7\nFizz\n...9\nBuzz\n 104: Fizz\n...2\n...3\nFizz\nBuzz\n...6\nFizz\n...8\n...9\nFizzBuzz\n (注)"..."の部分には左端の数字が入る、と考えてください。
ドット(...)で示したところには数によって変わる部分で、それ以外の部分はどんな数字が来ても常に同じです。常に同じであれば、固定値を出力すれば良いので速くなるでしょう。
数字が10個進むまで上の桁は変わらないので、同じ文字列を何度も使いまわせます。数字から文字列への変換を何度も行わなくて良いので速くなるでしょう。
オフセット0xf6アルゴリズムでは数字1個につき1回、文字列への変換をしていました。1桁落としを適用すると数字から文字列への変換は10個に1回で済みます。
static void fizzbuzz30(struct dec *d, uint64_t j)
{
uint64_t h, l;
uint32_t wp_before = wp;
char *p = get_p();
char *p_s = p;
int r;
//数字から文字列への変換、hとlには文字列化された値が返る
//上位桁はこのあとずっと使いまわす
to_num(d, &h, &l);
//...1の上位桁出力
r = out_fixnum(p, d, h, l); p += r;
//...1の最下位桁出力(固定文字列)
r = out_two(p, "1\n"); p += r;
//...2の上位桁出力
r = out_fixnum(p, d, h, l); p += r;
//...2の最下位桁、Fizz出力(固定文字列)
r = out_2fizz(p); p += r;
//...4の上位桁出力
r = out_fixnum(p, d, h, l); p += r;
//...4の最下位桁、Buzz、Fizz出力(固定文字列)
r = out_4bandf(p); p += r;
//...7の上位桁出力
r = out_fixnum(p, d, h, l); p += r;
//...7の最下位桁出力(固定文字列)
r = out_two(p, "7\n"); p += r;
//...8の上位桁出力
r = out_fixnum(p, d, h, l); p += r;
//...8の最下位桁、Fizz、Buzz出力(固定文字列)
r = out_8fandb(p); p += r;
//桁上げ考慮したインクリメント(元の処理でいうと+10に相当)
inc_c(d);
数値から文字列への変換がなくなって、使いまわしの文字列出力と固定の文字列の羅列になります。これが結構速度に効くようです。命令そのものも減りますし分岐がほとんどなくなるから(?)でしょうか?
今回紹介した1桁落としと、前回紹介したSSE命令による最適化(2023年10月9日の日記参照)は独立したアイデアのため同時に適用できます。さらにハッピーです。
効き目を見たいので、1桁落とし+SSE命令版も実装します。
省電力PC(CPU: Pentium J4205)で測定します。SSE版をビルドするときは-msse4.1オプションを付けてください。
# 20231012_fizzbuzz_div10.c 33.3GiB 0:00:07 [4.22GiB/s] [ <=> ] real 0m7.898s user 0m6.260s sys 0m3.830s # 20231012_fizzbuzz_div10_sse.c 33.3GiB 0:00:06 [5.42GiB/s] [ <=> ] real 0m6.147s user 0m4.212s sys 0m4.243s
次はデスクトップPC(CPU: Ryzen 7 5700X)で測定します。
# 20231012_fizzbuzz_div10.c 33.3GiB 0:00:01 [18.6GiB/s] [ <=> ] real 0m1.799s user 0m1.482s sys 0m1.089s # 20231012_fizzbuzz_div10_sse.c 33.3GiB 0:00:01 [19.1GiB/s] [ <=> ] real 0m1.744s user 0m1.480s sys 0m1.034s
前回測定分(2023年10月1日の日記参照)も含めて、時間と高速化の度合いをまとめると、
FizzBuzzの種類 | Pentium J4205の実行時間 | 倍率 | Ryzen 7の実行時間 | 倍率 |
---|---|---|---|---|
自前itoa | 1m6.621s | - | 15.759s | - |
30個まとめる | 38.860s | x1.7 | 9.152s | x1.7 |
オフセット0xf6 | 9.671s | x6.8 | 2.063s | x7.6 |
1桁落とし | 7.898s | x8.4 | 1.799s | x8.7 |
1桁落とし+SSE命令 | 6.147s | x10.8 | 1.744s | x9.0 |
今回の測定では2^32 - 2までしか測っていませんが、もっと大きな数までFizzBuzzする場合、特定の桁数のみを狙った(前回は9桁と10桁に特化)最適化は桁数が変わると効果がなくなるのに対し、1桁落としならば何桁になっても効果があるのが嬉しいところです。
ソースコードはこちらからどうぞ。
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