目次: GCC
Linuxをデバッグするにはkgdbを使うと思いますが、QEMU + GDBでよりお手軽にデバッグができます。お手軽とは書いたものの、実際やったところQEMUでかなり苦戦したのでメモしておきます。
対象のアーキテクチャはAArch64を選びました。お好きなアーキテクチャを使っていただいて構いませんが、Linuxのコンフィグをどうするべきかと、QEMUの動かし方を知っているアーキテクチャにしてください。せっかくLinuxをビルドしても動かせなくて詰みます。
ツールチェーンの構築の方法は昔の日記(2018年7月15日の日記参照)で構築手段をご紹介しています。crosstool-ngはデフォルトだとGDBがビルドされなかった気がするので、
CT_DEBUG_GDB=y Debug facilities ---> [*] gdb --->
この変更が必要になると思います。
Linuxカーネルはlinux-nextを使いました。新し目のLTSカーネルなども十分動くはずです。コンフィグの変更点は下記のとおりです。
CONFIG_RANDOMIZE_BASE=n(gdbでデバッグするときは、アドレスをランダムに変えられると困るため) Kernel Features ---> [ ] Randomize the address of the kernel image CONFIG_DEBUG_INFO_REDUCED=n(yだとgdbで構造体などの情報が見えなくなるため) Kernel hacking ---> Compile-time checks and compiler options ---> [*] Compile the kernel with debug info [ ] Reduce debugging information CONFIG_MODULES=n(モジュールのインストールが面倒なので) [ ] Enable loadable module support ----
デフォルトのコンフィグだと、やたらと色々なドライバをビルドするので時間がかかります。グラフィクス系のドライバなどの明らかに不要なドライバは外しても良いと思います。
QEMUは様々なハードウェアを模倣できます。そのなかにRaspberry Pi 3bがありましたのでこれを使います。initrdイメージはbuildrootで作りました。
qemu-system-aarch64 \ -machine raspi3b \ -kernel arch/arm64/boot/Image \ -append "earlycon=pl011,0x3f201000 console=ttyAMA0" \ -dtb arch/arm64/boot/dts/broadcom/bcm2837-rpi-3-b.dtb \ -initrd ../buildroot/output/images/rootfs.cpio \ -serial stdio \ -s
起動してプロンプトまで表示されますが、キー入力を全く受け付けず操作不能になってしまいます。解決方法がわからなかったので諦めました。
ちなみに最近のlinux-nextを使う場合は、GPIOとpinctrlの初期化順を修正するパッチを当てないといけません。これを当てないとpinctrlが無効になってしまい、連鎖的にpinctrlに依存しているSDカードのドライバなども無効化され「rootfsがマウントできない!」とpanicになってしまいます。
この問題に気づくまでかなり時間がかかりました。バグだと思ってめっちゃ調べたのに、もうパッチがLKMLに投稿されていたという体験は、linux-nextを使っていると珍しくないですけどね。よりによってRaspberry Piだけで起きるバグをタイムリーに引くとは思わなかった……完全に油断してた。
Raspberry Piマシンの代わりにvirtマシンを使うことにしました。
今回はユーザーランドは動けばOKですから、Raspberry PiのディスクイメージRaspberry Pi OS Lite 64bit(公式ダウンロードサイト)を使用します。
QEMUで起動する場合virtioを使用します。QEMUのvirtマシンは残念ながらSDやmtdには対応していません。パラレルフラッシュはサイズが64MBまでのためにRaspberry Pi OSのイメージは大きすぎると言われ起動できません。
qemu-system-aarch64 \ -machine virt -cpu cortex-a53 -smp 1 \ -kernel arch/arm64/boot/Image -append "rw root=/dev/vda2" \ -drive file=2022-01-28-raspios-bullseye-arm64-lite_resize.img,format=raw,if=virtio \ -serial stdio \ -s
最後の -sオプションはGDBの接続をポート1234で待機するオプション -gdb tcp::1234の短縮形です。カーネルのブート部分などをデバッグする場合は、GDBを接続するまで停止していてほしいので -Sも一緒に付けると良いです。
前置きがだいぶ長くなりましたがこれでデバッグ環境が整いました。GDBをQEMUに接続するにはtarget remoteコマンドを使います。
$ aarch64-unknown-linux-gnu-gdb vmlinux GNU gdb (crosstool-NG 1.24.0.501_5bf4485) 10.2 Copyright (C) 2021 Free Software Foundation, Inc. License GPLv3+: GNU GPL version 3 or later <http://gnu.org/licenses/gpl.html> This is free software: you are free to change and redistribute it. There is NO WARRANTY, to the extent permitted by law. Type "show copying" and "show warranty" for details. This GDB was configured as "--host=x86_64-build_pc-linux-gnu --target=aarch64-unknown-linux-gnu". Type "show configuration" for configuration details. For bug reporting instructions, please see: <https://www.gnu.org/software/gdb/bugs/>. Find the GDB manual and other documentation resources online at: <http://www.gnu.org/software/gdb/documentation/>. For help, type "help". Type "apropos word" to search for commands related to "word"... Reading symbols from vmlinux... (gdb) b start_kernel Breakpoint 1 at 0xffff800009e10c64: file init/main.c, line 931. (gdb) target remote :1234 Remote debugging using :1234 0x0000000040000000 in ?? () (gdb) c Continuing. Breakpoint 1, start_kernel () at init/main.c:931 931 {
実行、ブレーク、ソースコードの表示もできています。良い感じですね!
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