コグノスケ


link 未来から過去へ表示(*)  link 過去から未来へ表示

link もっと前
2021年7月21日 >>> 2021年7月8日
link もっと後


2021年7月9日

OpenOCDとHiFive UnleashedのSPI Flashその5 - UnleashedとOpenOCD消去の謎を追う

目次: OpenOCD

これまでに書き込み、消去の仕組みを調べました。その過程でどうしてHiFive UnleashedでSPI Flashの消去が正常に動作しないのかわかりました。アドレスの指定が間違っているからです。

SPI Flashの消去処理

// openocd/src/flash/nor/fespi.c

static int fespi_erase_sector(struct flash_bank *bank, int sector)
{

...

	retval = fespi_tx(bank, fespi_info->dev->erase_cmd);    //★ブロック64K消去コマンド(4バイトアドレスを期待)
	if (retval != ERROR_OK)
		return retval;
	sector = bank->sectors[sector].offset;
	retval = fespi_tx(bank, sector >> 16);    //★アドレス(3バイトしか送っていない)
	if (retval != ERROR_OK)
		return retval;
	retval = fespi_tx(bank, sector >> 8);
	if (retval != ERROR_OK)
		return retval;
	retval = fespi_tx(bank, sector);
	if (retval != ERROR_OK)
		return retval;

消去コマンドは0xdc(4BER64Kコマンド)で4バイトアドレスを期待していますが、今のOpenOCDの実装は3バイトアドレスを渡しています。これでは動作しません。最初に動作確認したログを覚えているでしょうか?改めて見直すと、

flash probe実行時の警告
$ riscv64-zephyr-elf-gdb

(gdb) set arch riscv:rv64

The target architecture is assumed to be riscv:rv64

(gdb) target remote :3333

Remote debugging using :3333

(gdb) monitor reset halt

JTAG tap: riscv.cpu tap/device found: 0x20000913 (mfg: 0x489 (SiFive Inc), part: 0x0000, ver: 0x2)

★★monitor xxxxはremote monitor(この場合OpenOCD)へのコマンドと解釈される

(gdb) monitor flash probe 0

Found flash device 'issi is25wp256d' (ID 0x0019709d)
device needs paging or 4-byte addresses - not implemented    ★★ん?なんだこれ
flash 'fespi' found at 0x20000000

OpenOCDが4バイトアドレスには対応していないよ、という警告を出していました。なるほど、やっと警告の意味がわかりました。

書き込みはどうして動くのか?

Unleashedの消去コマンドが動作しない理由はわかりましたが、まだいくつか不思議な点が残っています。

Unleashedで書き込みできるのはなぜ?
書き込みコマンドとして0x02(PPコマンド)を決め打ちしているためです。PPコマンドは3バイトアドレスを期待するので正常に動作します。ただし16MB以降には書き込みできないので、今の実装は十分とは言えません。
HiFive1が正常に書き換え、消去ができるのはなぜ?
搭載されているSPI Flashの型番が違うためです。HiFive1はISSI IS25LP032を搭載しています。SPI Flashのパラメータリストを見るとerase_cmd = 0xd8(BER64Kコマンド)になっていて、BER64Kコマンドは3バイトアドレスを期待するので正常に動作します。容量も小さいので3バイトアドレスで十分です。

比較しやすいようにSPI FlashのパラメータリストのうちHiFive1とHiFive Unleashedに関わるところだけ抜粋しておきます。

SPI Flashのパラメータを保持している配列の定義

// openocd/src/flash/nor/spi.c

const struct flash_device flash_devices[] = {
	/* name, read_cmd, qread_cmd, pprog_cmd, erase_cmd, chip_erase_cmd, device_id,
	 * pagesize, sectorsize, size_in_bytes */
	FLASH_ID("st m25p05",           0x03, 0x00, 0x02, 0xd8, 0xc7, 0x00102020, 0x80,  0x8000,  0x10000),

...

	//★HiFive1が搭載しているFlash
	FLASH_ID("issi is25lp032",      0x03, 0x00, 0x02, 0xd8, 0xc7, 0x0016609d, 0x100, 0x10000, 0x400000),

...

	//★HiFive Unleashedが搭載しているFlash
	FLASH_ID("issi is25wp256d",     0x13, 0xec, 0x12, 0xdc, 0xc7, 0x0019709d, 0x100, 0x10000, 0x2000000),

...

結論としてはOpenOCDの実装を変えないとHiFive UnleashedのSPI Flashの書き込み、消去は正常に行えないことがわかりました。手順では回避不可能です。

編集者:すずき(2023/09/24 09:18)

コメント一覧

  • コメントはありません。
open/close この記事にコメントする



2021年7月8日

OpenOCDとHiFive UnleashedのSPI Flashその4 - OpenOCDのSPI Flashドライバの仕組み(消去編)

目次: OpenOCD

いよいよ、正常に動かないSPI Flashの消去を見ます。消去は書き込みと違い大量にデータを書く必要がなく、ヘルパープログラムを使った実装はありません。前回紹介したJTAGでSPIを直接制御する方法(簡易版)と似た処理です。

消去の方法

SPI Flashの消去には3種類あります。ブロック消去に対応していないデバイスもあるようです。ややこしいことに統一された名前がないらしくて、メーカーによっては大きな消去単位をセクタと呼んでいます(Micronがそうだった)。なんじゃそりゃ、訳がわからんから統一してくれ〜。

  • 全消去
  • ブロック(セクタ)消去: いくつかのセクタをまとめたブロック単位で消去します、64KBか32KBです
  • セクタ(サブセクタ)消去: セクタ単位で消去します、デバイスによりますが4KB程度です

細かい名前は覚えても意味がない(メーカーによって違うのでどうでも良い)ので、全部消す、大サイズで消す、小サイズで消す、くらいの理解で十分だと思います。

消去の処理

前置きはこれくらいにして、消去処理のコードを見ましょう。

消去処理

// openocd/src/flash/nor/fespi.c

static int fespi_erase_sector(struct flash_bank *bank, int sector)
{
	struct fespi_flash_bank *fespi_info = bank->driver_priv;
	int retval;

	retval = fespi_tx(bank, SPIFLASH_WRITE_ENABLE);
	if (retval != ERROR_OK)
		return retval;
	retval = fespi_txwm_wait(bank);
	if (retval != ERROR_OK)
		return retval;

	if (fespi_write_reg(bank, FESPI_REG_CSMODE, FESPI_CSMODE_HOLD) != ERROR_OK)    //★CE# 信号をLowにする(負論理、処理の開始を示す)
		return ERROR_FAIL;
	retval = fespi_tx(bank, fespi_info->dev->erase_cmd);    //★ブロック64K消去コマンド
	if (retval != ERROR_OK)
		return retval;
	sector = bank->sectors[sector].offset;
	retval = fespi_tx(bank, sector >> 16);    //★アドレス
	if (retval != ERROR_OK)
		return retval;
	retval = fespi_tx(bank, sector >> 8);
	if (retval != ERROR_OK)
		return retval;
	retval = fespi_tx(bank, sector);
	if (retval != ERROR_OK)
		return retval;
	retval = fespi_txwm_wait(bank);    //★送信し終わるまで待つ
	if (retval != ERROR_OK)
		return retval;
	if (fespi_write_reg(bank, FESPI_REG_CSMODE, FESPI_CSMODE_AUTO) != ERROR_OK)    //★CE# 信号をHighにする(負論理、処理の終了を示す)
		return ERROR_FAIL;

	retval = fespi_wip(bank, FESPI_MAX_TIMEOUT);
	if (retval != ERROR_OK)
		return retval;

	return ERROR_OK;
}

ページ書き込みのときはコマンドが決め打ちでしたが、セクター消去ではコマンドが変数になっています。この変数が持つ値は、前回も紹介したSPI Flashのパラメータリストに載っています。もう一度掲載します。

SPI Flashのパラメータを保持している配列の定義

// openocd/src/flash/nor/spi.c

const struct flash_device flash_devices[] = {
	/* name, read_cmd, qread_cmd, pprog_cmd, erase_cmd, chip_erase_cmd, device_id,
	 * pagesize, sectorsize, size_in_bytes */
	FLASH_ID("st m25p05",           0x03, 0x00, 0x02, 0xd8, 0xc7, 0x00102020, 0x80,  0x8000,  0x10000),

...

	//★HiFive1が搭載しているFlash
	FLASH_ID("issi is25lp032",      0x03, 0x00, 0x02, 0xd8, 0xc7, 0x0016609d, 0x100, 0x10000, 0x400000),
	FLASH_ID("issi is25lp064",      0x03, 0x00, 0x02, 0xd8, 0xc7, 0x0017609d, 0x100, 0x10000, 0x800000),
	FLASH_ID("issi is25lp128d",     0x03, 0xeb, 0x02, 0xd8, 0xc7, 0x0018609d, 0x100, 0x10000, 0x1000000),
	FLASH_ID("issi is25wp128d",     0x03, 0xeb, 0x02, 0xd8, 0xc7, 0x0018709d, 0x100, 0x10000, 0x1000000),
	FLASH_ID("issi is25lp256d",     0x13, 0xec, 0x12, 0xdc, 0xc7, 0x0019609d, 0x100, 0x10000, 0x2000000),
	//★HiFive Unleashedが搭載しているFlash
	FLASH_ID("issi is25wp256d",     0x13, 0xec, 0x12, 0xdc, 0xc7, 0x0019709d, 0x100, 0x10000, 0x2000000),

...

HiFive Unleashedが搭載しているSPI Flashの品番はISSI IS25WP256Dですから、erase_cmdは0xdcです。SPI Flashのデータシートを見ると0xdcはBLOCK ERASE OPERATIONの4BER64Kコマンドです。

コマンドとアドレス指定

コードを見たときにお気づきかもしれませんが、SPI Flashの書き込みや消去で渡しているアドレスは3バイトしかなく、最大で16MBまでしか扱えません。一方HiFive Unleashedが搭載しているSPI Flashの容量は256Mbit = 32MBです。

足りないですね?どうやって16MB以降の消去や書き込みを行うのでしょうか?方法は3つあるようです。

  • バンク切替: アドレスの始点を変えて3バイトアドレスコマンドを使う
  • モード切替: 3バイトアドレスコマンドに4バイトアドレスを渡せる
  • 別コマンド: 4バイトアドレスコマンドを使う

OpenOCDは3番目を期待しているようです。なぜかというと4BER64Kコマンドは4バイトアドレスを期待するコマンドだからです。


4BER64Kコマンド仕様

データシートから抜粋したコマンドの仕様は上記の通りです。アドレスを4バイト送ってくることを期待しています。しかし実装は3バイトしかアドレスを送っていません。うーん、何かおかしいですね?

編集者:すずき(2023/09/24 09:17)

コメント一覧

  • コメントはありません。
open/close この記事にコメントする



link もっと前
2021年7月21日 >>> 2021年7月8日
link もっと後

管理用メニュー

link 記事を新規作成

<2021>
<<<07>>>
----123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

最近のコメント20件

  • link 24年4月22日
    hdkさん (04/24 08:36)
    「うちのHHFZ4310は15年突破しまし...」
  • link 24年4月22日
    すずきさん (04/24 00:37)
    「ちゃんと数えてないですけど蛍光管が10年...」
  • link 24年4月22日
    hdkさん (04/23 20:52)
    「おお... うちのHHFZ4310より後...」
  • link 20年6月19日
    すずきさん (04/06 22:54)
    「ディレクトリを予め作成しておけば良いです...」
  • link 20年6月19日
    斎藤さん (04/06 16:25)
    「「Preferencesというメニューか...」
  • link 21年3月13日
    すずきさん (03/05 15:13)
    「あー、このプログラムがまずいんですね。ご...」
  • link 21年3月13日
    emkさん (03/05 12:44)
    「キャストでvolatileを外してアクセ...」
  • link 24年1月24日
    すずきさん (02/19 18:37)
    「簡単にできる方法はPowerShellの...」
  • link 24年1月24日
    KKKさん (02/19 02:30)
    「追伸です。\nネットで調べたらマイクロソ...」
  • link 24年1月24日
    KKKさん (02/19 02:25)
    「私もエラーで困ってます\n手動での回復パ...」
  • link 24年1月24日
    すずきさん (02/13 11:48)
    「ありがとうございます。\n私のPCはもう...」
  • link 24年1月24日
    えはらさん (02/12 15:00)
    「Powershellのスクリプトは以下の...」
  • link 24年2月2日
    すずきさん (02/02 18:17)
    「サーバー側の設定はとても簡単でした。ちょ...」
  • link 24年2月2日
    hdkさん (02/02 08:54)
    「さくらのレンタルサーバの設定でLet's...」
  • link 24年1月24日
    すずきさん (01/28 11:35)
    「ご指摘ありがとうございます。確かに間違っ...」
  • link 24年1月24日
    通りすがりさん (01/27 14:05)
    「Powershellで解決しなかったのは...」
  • link 23年11月29日
    すずきさん (12/04 00:38)
    「あ、そうか。1nsですね。ありがとうござ...」
  • link 23年11月29日
    hdkさん (12/03 18:49)
    「>(本来1usなのに1msになって...」
  • link 23年11月29日
    すずきさん (12/03 00:35)
    「大山先生、お久しぶりです。コメントありが...」
  • link 23年11月29日
    大山恵弘さん (12/02 18:53)
    「すずきさんのX(旧Twitter)へのポ...」

最近の記事3件

  • link 24年5月3日
    すずき (05/10 23:05)
    「[ROCK 3Cの青色LED点滅を止める] 目次: Arduinoゲーミングマシンの流行により、最近のコンピュータは意味もなく...」
  • link 23年6月2日
    すずき (05/06 16:10)
    「[Arduino - まとめリンク] 目次: Arduino一覧が欲しくなったので作りました。 M5Stackとesp32とA...」
  • link 24年4月25日
    すずき (04/29 10:08)
    「[AVIFの変換] AVIFが読めないアプリケーションがたまにあるので、AVIF(AV1 Image File Format)...」
link もっとみる

こんてんつ

open/close wiki
open/close Linux JM
open/close Java API

過去の日記

open/close 2002年
open/close 2003年
open/close 2004年
open/close 2005年
open/close 2006年
open/close 2007年
open/close 2008年
open/close 2009年
open/close 2010年
open/close 2011年
open/close 2012年
open/close 2013年
open/close 2014年
open/close 2015年
open/close 2016年
open/close 2017年
open/close 2018年
open/close 2019年
open/close 2020年
open/close 2021年
open/close 2022年
open/close 2023年
open/close 2024年
open/close 過去日記について

その他の情報

open/close アクセス統計
open/close サーバ一覧
open/close サイトの情報

合計:  counter total
本日:  counter today

link About www.katsuster.net
RDFファイル RSS 1.0

最終更新: 05/10 23:05