目次: GCC
GCCをデバッグする入り口まで辿り着くのも案外大変だったので、方法を書き残しておこうと思います。
C言語(じゃなくても良いですが)をコンパイルする際に、gcc a.cのようにコマンドを起動します。一般的にgccコマンドをコンパイラと呼びますが、正確にいえばgccはコンパイラドライバ(コンパイラ、アセンブラ、リンカを順に呼び出すプログラム)です。
GCCの場合、コンパイラはcc1という名前で、コンパイラドライバgccとは別のプログラムとして存在します。コンパイラの役目は高級言語(Cなら *.cファイル)からアセンブリ言語(*.sファイル)に変換することです。
DebianのGCC 8.0だと /usr/lib/gcc/x86_64-linux-gnu/8/cc1に置かれています。クロスコンパイラの場合は様々ですが、crostool-NGでRISC-V 64bit Linux向けにビルドした場合(ビルド方法は 2019年2月26日の日記参照)は、~/x-tools/riscv64-unknown-linux-gnu/libexec/gcc/riscv64-unknown-linux-gnu/8.2.0/cc1に置かれます。ローカルビルドしないときは、~/x-toolsをクロスコンパイラをインストールしたディレクトリで読み替えてください。
デバッガでコンパイラを追うとき、コンパイラドライバ → コンパイラだと余計な処理がたくさん挟まって邪魔なので、コンパイラ単体で起動したくなりますよね?私はなりました。特に気にならない人は読み飛ばしてください。
コンパイラcc1のオプションは、コンパイラドライバgccに渡したオプション以外にも、cc1用のオプションが渡されます。そのためcc1をシェルなどから手打ちで起動するのはちょっと難しいです。
しかし無理してコンパイラcc1のオプションを調べずとも、コンパイラドライバgccが渡すオプションをそのままパクれば良いです。gcc/gcc.cのexecute() 関数を下記のように書き換えると、cc1の起動オプションが表示されます。
diff --git a/gcc/gcc.c b/gcc/gcc.c
index a716f708259..e48e5cca79b 100644
--- a/gcc/gcc.c
+++ b/gcc/gcc.c
@@ -3084,6 +3084,12 @@ execute (void)
       const char *errmsg;
       int err;
       const char *string = commands[i].argv[0];
+      int kkk;
+
+      printf("\n------------------------------\n");
+      for (kkk = 0; commands[i].argv[kkk]; kkk++)
+            printf("%s ", commands[i].argv[kkk]);
+      printf("\n------------------------------\n");
 
       errmsg = pex_run (pex,
 			((i + 1 == n_commands ? PEX_LAST : 0)
出力は下記のようになります。この例では、コンパイラはRISC-V 32bitベアメタル向けを使っています。
------------------------------ /home/katsuhiro/share/projects/oss/crosstool-builder-new/buildroot/libexec/gcc/riscv32-unknown-elf/8.3.0/cc1 -quiet a.c -quiet -dumpbase a.c -march=rv32gc -mabi=ilp32d -auxbase a -o /tmp/ccdd2F4Z.s ------------------------------
この情報があれば、コマンドラインから単独で起動できますし、GDBで追うこともできます。
$ gdb /home/katsuhiro/share/projects/oss/crosstool-builder-new/buildroot/libexec/gcc/riscv32-unknown-elf/8.3.0/cc1
(gdb) b main
Breakpoint 1 at 0x4308a0: main. (2 locations)
(gdb) r a.c -dumpbase a.c -march=rv32gc -mabi=ilp32d -auxbase a -g -O0 -Wall -fdump-tree-all-raw -fdump-rtl-all -o a.s
Starting program: /home/katsuhiro/share/projects/oss/crosstool-builder-new/buildroot/libexec/gcc/riscv32-unknown-elf/8.3.0/cc1 a.c -dumpbase a.c -march=rv32gc -mabi=ilp32d -auxbase a -g -O0 -Wall -fdump-tree-all-raw -fdump-rtl-all -o a.s
Breakpoint 1, main (argc=15, argv=0x7fffffffd3c8)
    at /home/katsuhiro/share/projects/oss/crosstool-builder-new/./gcc/gcc/main.c:36
36        toplev toplev (NULL, /* external_timer */
ブレークポイントなども仕掛けられますし、変数の値を表示することもできます。解析がかなり楽になるはずです……たぶん。
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目次: ARM
最近はたくさんのARMのシングルボードコンピュータ(SBC)が市販されています。嬉しい時代になりました。これからのお買い物の参考としてリストアップしました。値段は変動するので参考です。
少し古い世代のSoCを採用したボード達です。
以前(2018年8月12日の日記参照)載せた情報も含んでいます。
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目次: GCC
最近GCCのコードを書き換えたり、デバッガで追ったり、GCCとお友達になろうとしています。まだ仲良くなれていませんが、入り口に立つまでが色々大変だったのと、間違いなく数カ月後に手順を忘れるので、方法を書き残しておこうと思います。
GCCのコードを書き換えて、結果を反映させるには、何らかの方法でGCCをビルドする必要があります。クロスビルド用ツールチェーンの構築は、昔の日記(2019年4月28日の日記参照)に書いたとおりです。コンパイラを追うだけで、ルートファイルシステムが必要なければ、おそらくcrosstool-NGを使うのが無難です。差分ビルドがうまく行かないので、何か変更した後に再ビルドするのがちょっと面倒ですが、それ以外は簡単で便利です。
私は再ビルドが遅くてイライラしたのと、ビルドの仕組みにも興味があったので、以前の日記(2019年4月29日の日記参照)に書いたとおり、昔作ったクロスコンパイラをビルドするMakefile(GitHubへのリンク)を改造して使っています。ブランチはorigin/develop/separate-makefileです。もうこちらを本線にしても良い気がしてきたな。
これも使い方を忘れるのでメモしておきます。手動でビルドするのとあまり変わりません。
#### ビルド用ディレクトリ $ mkdir build_my_toolchain $ cd build_my_toolchain #### 環境構築用のリポジトリ $ git clone https://github.com/katsuster/crosstool-builder $ cd crosstool-builder $ git checkout -t origin/develop/separate-makefile $ cd ../ #### GCCだけリポジトリで取得する(git diffしたいから) $ git clone https://gcc.gnu.org/git/gcc.git ## GCC-8.3.0を使う、他のバージョンでもある程度ビルドできるはず $ cd gcc $ git checkout gcc-8_3_0-release $ cd ../ #### その他の依存モジュールはtarballを使用する $ mkdir tmp $ cd tmp $ wget https://mirrors.edge.kernel.org/pub/linux/kernel/v4.x/linux-4.19.1.tar.xz $ wget https://ftp.gnu.org/gnu/binutils/binutils-2.31.1.tar.bz2 $ wget https://ftp.gnu.org/gnu/glibc/glibc-2.28.tar.xz $ wget https://ftp.gnu.org/gnu/gmp/gmp-6.1.2.tar.lz $ wget https://ftp.gnu.org/gnu/mpc/mpc-1.1.0.tar.gz $ wget https://ftp.gnu.org/gnu/mpfr/mpfr-4.0.2.tar.xz $ cd ../ #### ツールチェーンに必要なモジュール $ tar xf tmp/linux-4.19.1.tar.xz $ tar xf tmp/binutils-2.31.1.tar.bz2 $ tar xf tmp/glibc-2.28.tar.xz $ ln -s linux-4.19.1 linux $ ln -s binutils-2.31.1 binutils $ ln -s glibc-2.28 glibc #### GCCに必要なモジュール $ tar xf tmp/gmp-6.1.2.tar.lz $ tar xf tmp/mpc-1.1.0.tar.gz $ tar xf tmp/mpfr-4.0.2.tar.xz $ cd gcc $ ln -s ../gmp-6.1.2 gmp $ ln -s ../mpc-1.1.0 mpc $ ln -s ../mpfr-4.0.2 mpfr $ cd ../
自分で書いていて面倒くさいなあと思いました。スクリプトにしたほうが良かったかもしれない。もしbinutilsも変更したりデバッグしたければ、tarballの代わりにリポジトリをチェックアウトしてくると良いです。
$ source crosstool-builder/env.sh $ cd crosstool-builder $ make -j4 install
デフォルトではRISC-V 64bit Linux向けのクロスコンパイラをビルドします。env.shを書き換えればAArch64やARM向けもビルド可能です。RISC-V 32bit向けはgcc-static(ベアメタル用コンパイラとして使用可能)までしかビルドできません。以降はglibcのビルドでエラーになりLinux用のクロスコンパイラはビルドできません。
$ cd crosstool-builder $ make -f gcc-static.mk -j4 install
GCCに何か修正を入れてビルドし直すときは、ビルドし直したい *.mkファイルを指定してmake します。
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目次: ARM
ROCKPro64のPCIeが動かなくて、しばらく放置(2019年3月16日の日記参照)していたのですが、今日久しぶりに見てみたところ、意外とあっさり直せました。
PCIeが動かなかった理由は単純で、PERST# 信号を全く制御しておらず、PCIeカードのリセットを解除していなかったためでした。それは動かないわ。
不思議なことにlinux-nextではROCKPro64以外のRK3399搭載ボードはPCIeが使えるように対応が入っているのに、ROCKPro64だけハブられています。悲しいので、作ったパッチをLKMLにぶん投げておきました。誰かの役に立てば嬉しいですね。
ちなみにROCKPro64のPCIe PERST# 信号は、こんな経路で来ていました。
RK3399 GPIO2_D4 -> PCIE_PERST_L -> PCIE_PERST_3V3_L -> PERST#
我が家にはPCIeのカードが3つあります。あります、というか、わざわざROCKPro64のPCIe接続テストのために買ったという方が正しいです。
リセットを制御していない場合、基本的にはどのボードも動きません。しかしUSB拡張カードだけはたまに動きます。不思議な挙動です。カードがPERST# を無視しているのか、偶然か、深追いしていないのでわかりません。
PERST# の制御をするように直したところ、USB 3.0カードと、SATAカードはバッチリ認識するようになりました。PCIe - PCIブリッジカードは起動中になぜかROCKPro64にリセットが掛かってしまい、うまくいきませんでした。
ROCKPro64からの給電では足りないのかと疑って、外部からブリッジカードに電源を供給してみましたが、ダメでした。PCでも使えたり使えなかったりする、割と特殊なカードらしいので、ROCKPro64では動かないのかもしれません。
さらに調べるにせよ、何にせよ、また次の機会ですね。
メモ: 技術系の話はFacebookから転記しておくことにした。多少修正。
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