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先日(2022年9月19日の日記参照)はJavaScriptと画面起動ロックAPI(Screen Wake Lock API)にてWindows PCの画面ロックを妨害する方法を紹介しました。
今回はWindows API(SetThreadExecutionState)を使って同様の機能を実現します。詳細はMicrosoftのAPIドキュメント(SetThreadExecutionState function (winbase.h) - Microsoft Learn)と、スリープに関する日本語の解説(システム スリープ条件 - Microsoft Learn)が参考になります。
そういえばWindows APIのドキュメント、今の名前はMicrosoft Learnになっていますね。昔はMSDN OnlineとかMicrosoft Docsとか呼ばれてた気がしますが、統合されて消えてしまったのかな……?
さておきコードはこんな感じです。簡単すぎるのでわざわざ載せるまでもないですけども。
#include <iostream>
#include <windows.h>
#include <winbase.h>
int main()
{
EXECUTION_STATE r;
r = SetThreadExecutionState(ES_CONTINUOUS | ES_AWAYMODE_REQUIRED);
if (r == NULL) {
std::cout << "failed!" << std::endl;
}
std::string hoge;
std::cin >> hoge;
return 0;
}
アプリケーション実行中にpowercfgでチェックすると、こんな風になるはずです。なおpowercfgを実行するには管理者権限でコマンドプロンプトを起動する必要があります。アプリケーション名は適当に読み替えてください。
C:\Windows\system32>powercfg /requests DISPLAY: なし。 SYSTEM: なし。 AWAYMODE: [PROCESS] \Device\HarddiskVolume3\dat\projects\c\ConsoleApplication1\x64\Debug\ConsoleApplication1.exe 実行: なし。 PERFBOOST: なし。 ACTIVELOCKSCREEN: なし。
画面起動ロックAPIはDISPLAYモードを要求していましたが、今回はAWAYMODEを要求しているので違うカテゴリに表示されています。もちろんAPIの引数を適切に変更すればDISPLAYも要求できます。
画面ロックの妨害機能のユーザーは意外と多いです。前回挙げたPowerPointの他に、Teamsのような会議アプリケーション、メディアプレーヤーなども使っているようです。個人的に意外だったものとしてはセットアッププログラムです。
例えば、下記はVisual Studioのセットアップ中にpowercfgを実行した結果です。
C:\Windows\system32>powercfg /requests DISPLAY: なし。 SYSTEM: なし。 AWAYMODE: なし。 実行: [PROCESS] \Device\HarddiskVolume3\Program Files (x86)\Microsoft Visual Studio\Installer\setup.exe Visual Studioインストーラー PERFBOOST: なし。 ACTIVELOCKSCREEN: なし。
普通はセットアップ中にスリープされることなんて想定していませんから、セットアップがエラーになる可能性があります。不都合が起きなかったとしても、スリープ中はセットアップが進みません。と、考えると時間がかかるセットアップ中にスリープを妨害するのは筋が通ってますね。
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ノートPCは下記のようなセキュリティ設定で運用している人が多いと思います。会社のPCもこういう設定が多いと思います。
この設定はセキュリティ上は素晴らしいです。ただし展示で使うときはちょっと困るんですよね……。自分のアカウントで画面ロックが掛かると、当然自分しか解除ができませんから自分がPCの前を離れられなくなります。
展示のためだけにセキュリティ設定を緩めるのも何だかイマイチですし、一時的に使える方法はないか?と思ったらありました。ヒントはPowerPointの全画面表示で、スライドショーを開始するとWindowsの画面ロックは発動しないのです。ほほう。
PowerPointに画面ロックの妨害ができるなら、そこらのアプリでも画面ロックの妨害を実現できるはずです。
どのWindowsのAPIを呼んだらいいのか?と思って調べていましたが、JavaScriptで手軽に実現する手段がありました。今のところChrome限定っぽいですが、
function addEvent(obj, name_event, func_event)
{
var func_prev = obj[name_event];
if (func_event == null) {
return;
}
if (func_prev == null) {
obj[name_event] = function() { func_event(); };
} else {
obj[name_event] = function() { func_prev(); func_event(); };
}
}
function f_resolve()
{
var statusElem = document.getElementById('status');
statusElem.textContent += 'Success. ';
}
function f_reject()
{
var statusElem = document.getElementById('status');
statusElem.textContent += 'Rejected. ';
}
function f_release()
{
var statusElem = document.getElementById('status');
statusElem.textContent += 'Released. ';
}
function testWakeLock()
{
var statusElem = document.getElementById('status');
var isSupported = false;
if ('wakeLock' in navigator) {
isSupported = true;
statusElem.textContent += 'Support wakeLock. ';
} else {
statusElem.textContent += 'Not support wakeLock. ';
return;
}
var wakeLock = null;
try {
wakeLock = navigator.wakeLock.request('screen');
} catch (err) {
statusElem.textContent += `${err.name}, ${err.message}`;
}
statusElem.textContent += 'Request. ';
wakeLock.then(f_resolve, f_reject);
wakeLock.addEventListener('release', f_release);
}
addEvent(window, "onload", testWakeLock);
この画面起動ロック(MDNへのリンク)機能を使うと、タブを切り替えたりしない限り画面ロックを妨害できるようです。
私の環境で試した限りでは、なぜかReleaseイベントが一切来ないのと、ブラウザをバックグラウンドに持っていくと動作が不安定(たまに効かない = 画面ロックしてしまう)ですが、一応効き目がありました。
画面起動ロックが効いているかどうかはpowercfgを使うとわかります。管理者モードでコマンドプロンプトを起動しpowercfg /requestsと /requestsoverrideを実行します(powercfgのヘルプ)。私の環境では /requestsの方に表示されていました。
C:\Windows\system32>powercfg /requests DISPLAY: [PROCESS] \Device\HarddiskVolume3\Program Files\Google\Chrome\Application\chrome.exe Blink Wake Lock SYSTEM: なし。 AWAYMODE: なし。 実行: なし。 PERFBOOST: なし。 ACTIVELOCKSCREEN: なし。
先ほどのスクリプトを実行したタブを切り替えると、
C:\Windows\system32>powercfg /requests DISPLAY: なし。 SYSTEM: なし。 AWAYMODE: なし。 実行: なし。 PERFBOOST: なし。 ACTIVELOCKSCREEN: なし。
となるはず、です。
在宅勤務の時、会社のWindowsノートPC(常時コミュニケーション用のツールが入っている)がすぐに画面ロックしてしまって、コミュニケーションツールにアクセスしづらいのと非常にウザくて困ってました。画面ロックを無効にもできなくて困っていたんですが、画面起動ロックで画面ロックを妨害できるようになってだいぶ使いやすくなりました。
画面ロックを仕込んだページを作られたら、画面ロックできなくなるんですかね?どうなるんだろうな?(追記: ローカルファイルじゃないと動作しませんでした)まあ、時限式の画面ロックに頼って、PCの前から立ち去るような運用はそもそも論外なのですが……。
理屈は良いので動くものがほしいせっかちな方へお送りします。 動作するページへのリンクです。注意点はネットワーク上のサイトでは機能しません(Not supportになります)ので、ローカルにダウンロードしてから開いてください。
不安な方はローカルに保存して開く前に中身をご確認ください。もしくは上記のスクリプトを見て&理解してご自身でページを作成くださいませ。
私が今使っているグラフィックスカードはMSI製で、オーバークロック用ツールMSI Afterburnerが使えます(MSI Afterburner公式サイトへのリンク)。他社製のグラフィクスカードでも類似のツール(ASUS GPU TweakIIなど)が公開されていると思います。
ツールの名前からしてコアクロックやメモリバスクロックを上げるのが主な目的だと思いますが、逆に下げる方向に使うこともできます。
GeForce RTX 3060の性能をフルに必要とするゲームばかりではありませんし、あえてクロックを下げて負荷軽減、省エネ&温度を低目に保てたら良いな〜くらいの期待です。残念ながらGPU温度を見ている限りでは、効き目はあまりなさそうですが……まあ気休めに。
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