SCHED_SETATTR

Section: Linux Programmer's Manual (2)
Updated: 2020-11-01
Index JM Home Page roff page
 

名前

sched_setattr, sched_getattr - スケジューリングポリシーと属性の設定と取得を行なう  

書式

#include <sched.h>

 int sched_setattr(pid_t pid, struct sched_attr *attr,
                  unsigned int flags);

 int sched_getattr(pid_t pid, struct sched_attr *attr,
                  unsigned int size, unsigned int flags);
 

説明

 

sched_setattr()

sched_setattr() システムコールは、 pid で指定された ID を持つスレッドのスケジューリングポリシーと関連する属性を設定する。 pid が 0 の場合、呼び出したスレッド自身のスケジューリングポリシーと属性が設定される。

現在のところ、 Linux では、 以下の「通常」の (つまり、リアルタイムではない) スケジューリングポリシーが、 policy に指定できる値としてサポートされている。

SCHED_OTHER
標準の、ラウンドロビンによる時分割型のスケジューリングポリシー。
SCHED_BATCH
「バッチ」形式でのプロセスの実行用。
SCHED_IDLE
「非常に」低い優先度で動作するバックグラウンドジョブ用。

どの実行可能スレッドを選択するかについて、より正確な制御を必要とする 時間の制約が厳しい特別なアプリケーション用として、 いろいろな「リアルタイム」ポリシーもサポートされている。 プロセスがこれらのポリシーをいつ使用できるかを決めるルールについては、sched(7) を参照。 policy には以下のリアルタイムポリシーを指定できる。

SCHED_FIFO
ファーストイン、ファーストアウト型のポリシー。
SCHED_RR
ラウンドロビン型のポリシー。

Linux では以下のポリシーも提供されている。

SCHED_DEADLINE
デッドライン (応答期限) ベースのスケジューリングポリシー。詳細は sched(7) を参照。

attr 引数は、 指定したスレッドの新しいスケジューリングポリシーと属性を定義した構造体へのポインターである。 この構造体は以下の形式である。

struct sched_attr {
    u32 size;              /* この構造体のサイズ */
    u32 sched_policy;      /* ポリシー (SCHED_*) */
    u64 sched_flags;       /* フラグ */
    s32 sched_nice;        /* nice 値 (SCHED_OTHER,
                              SCHED_BATCH) */
    u32 sched_priority;    /* 静的優先度 (SCHED_FIFO,
                              SCHED_RR) */
    /* 残りのフィールドは SCHED_DEADLINE 用である */
    u64 sched_runtime;
    u64 sched_deadline;
    u64 sched_period; };

構造体 sched_attr のフィールドは以下の通りである。

size
このフィールドには、 構造体のバイト単位のサイズを設定する。 sizeof(struct sched_attr) を指定すればよい。 指定された構造体がカーネル構造体よりも小さい場合、 追加となるフィールドは 0 とみなされる。 指定された構造体がカーネル構造体よりも大きい場合、 カーネルは追加のフィールドが 0 であるかを検査する。 0 でない場合は sched_setattr() はエラー E2BIG で失敗するので、 size をカーネル構造体のサイズに更新する必要がある。
ユーザー空間の sched_attr 構造体のサイズがカーネル構造体のサイズと一致しなかった場合の上記の動作は、 このインターフェースを将来拡張できるようにするためである。 サイズが大きい構造体を渡す行儀の良くないアプリケーションも、 将来カーネルの sched_attr 構造体のサイズが大きくなったとしてもおかしくならない。 この仕組みにより、 将来的には、 大きなユーザー空間 sched_attr 構造体があることを知っているアプリケーションで、 大きいサイズの構造体に対応していない古いカーネル上で動作しているかを判定することができる。
sched_policy
このフィールドはスケジューリングポリシーを指定する。 上記のリストにある SCHED_* 値のいずれかを指定する。
sched_flags
This field contains zero or more of the following flags that are ORed together to control scheduling behavior:

 SCHED_FLAG_RESET_ON_FORK
Children created by fork(2) do not inherit privileged scheduling policies. See sched(7) for details.
SCHED_FLAG_RECLAIM (Linux 4.13 以降)
This flag allows a SCHED_DEADLINE thread to reclaim bandwidth unused by other real-time threads.
SCHED_FLAG_DL_OVERRUN (Linux 4.16 以降)
This flag allows an application to get informed about run-time overruns in SCHED_DEADLINE threads. Such overruns may be caused by (for example) coarse execution time accounting or incorrect parameter assignment. Notification takes the form of a SIGXCPU signal which is generated on each overrun.
This SIGXCPU signal is process-directed (see signal(7)) rather than thread-directed. This is probably a bug. On the one hand, sched_setattr() is being used to set a per-thread attribute. On the other hand, if the process-directed signal is delivered to a thread inside the process other than the one that had a run-time overrun, the application has no way of knowing which thread overran.
sched_nice
このフィールドは、 sched_policySCHED_OTHERSCHED_BATCH が指定された場合に設定される nice 値を指定する。 nice 値は -20 (高優先度) から +19 (低優先度) の範囲の数値である。 sched(7) を参照。
sched_priority
このフィールドは、 sched_policySCHED_FIFOSCHED_RR が指定された場合に設定される静的優先度を指定する。 これらのポリシーで指定できる優先度の範囲は、 sched_get_priority_min(2) と sched_get_priority_max(2) を使って判定できる。 他のポリシーでは、 このフィールドには 0 を指定しなければならない。
sched_runtime
このフィールドは、 デッドラインスケジューリングの "Runtime" パラメーターを指定する。 この値はナノ秒単位で表現される。 このフィールドと次の 2 つのフィールドは SCHED_DEADLINE スケジューリングにおいてのみ使用される。 詳細は sched(7) を参照。
sched_deadline
このフィールドは、 デッドラインスケジューリングの "Deadline" パラメーターを指定する。 この値はナノ秒単位で表現される。
sched_period
このフィールドは、 デッドラインスケジューリングの "Period" パラメーターを指定する。 この値はナノ秒単位で表現される。

flags 引数は、このインターフェースの将来の拡張のために用意されている。 現在の実装では 0 を指定しなければならない。  

sched_getattr()

sched_getattr() システムコールは、 pid で指定された ID を持つスレッドのスケジューリングポリシーと関連する属性を取得する。 pid が 0 の場合、呼び出したスレッド自身のスケジューリングポリシーと関連する属性を取得する。

size 引数には、 ユーザー空間での sched_attr 構造体の大きさを設定する。 この値は、 少なくとも初期バージョンの sched_attr 構造体のサイズでなければならない。 そうでなかった場合、 エラー EINVAL で呼び出しが失敗する。

取得したスケジューリング属性は、 attr が指す sched_attr 構造体の各フィールドに格納される。 カーネルは attr.sizesched_attr 構造体のサイズを設定する。

If the caller-provided attr buffer is larger than the kernel's sched_attr structure, the additional bytes in the user-space structure are not touched. If the caller-provided structure is smaller than the kernel sched_attr structure, the kernel will silently not return any values which would be stored outside the provided space. As with sched_setattr(), these semantics allow for future extensibility of the interface.

flags 引数は、このインターフェースの将来の拡張のために用意されている。 現在の実装では 0 を指定しなければならない。  

返り値

成功した場合は sched_setattr() と sched_getattr() は 0 を返す。 エラーの場合は -1 が返され、 エラーの原因を示す値が errno に設定される。  

エラー

sched_getattr() と sched_setattr() の両方が以下の理由で失敗する。
EINVAL
attr が NULL である。 pid が負である。 flags が 0 以外である。
ESRCH
ID が pid のスレッドが見つからなかった。

さらに、 sched_getattr() は以下の理由でも失敗する。

E2BIG
sizeattr で指定されたバッファーが小さすぎる。
EINVAL
size が無効である。つまり、 最初のバージョンの sched_attr 構造体 (48 バイト) よりも小さいか、 システムのページサイズよりも大きい。

さらに、 sched_setattr() は以下の理由でも失敗する。

E2BIG
sizeattr で指定されたバッファーがカーネル構造体よりも大きく、 一つ以上の超過バイトが 0 でなかった。
EBUSY
SCHED_DEADLINE の流入制御の失敗については sched(7) を参照。
EINVAL
attr.sched_policy が認識できるポリシーではない。 attr.sched_flagsSCHED_FLAG_RESET_ON_FORK 以外のフラグが含まれている。 attr.sched_priority が無効である。 attr.sched_policySCHED_DEADLINE で、 attr に指定されたデッドラインスケジューリングパラメーターが無効である。
EPERM
呼び出した元が適切な特権を持っていない。
EPERM
pid で指定されたスレッドの CPU affinity マスクにシステムの全ての CPU のうち含まれていないものがある (sched_setaffinity(2) を参照)。
 

バージョン

これらのシステムコールは Linux 3.14 で初めて登場した。  

準拠

これらのシステムコールは非標準の Linux による拡張である。  

注意

sched_setattr() は、sched_setscheduler(2), sched_setparam(2), nice(2) の機能および setpriority の一部機能を持つ (ただし、setpriority(2) の、指定されたユーザーに所属するすべてのプロセスまたは指定されたグループのすべてのプロセスの優先度を設定する機能は除く)。 同様に、 sched_getattr() は sched_getscheduler(2), sched_getparam(2) の機能および getpriority(2) の一部機能を持つ。  

バグ

バージョン 3.15 までの Linux では、 sched_setattr() は、 エラーの節に書かれている E2BIG の場合にエラーEFAULT で失敗していた。

In Linux versions up to 5.3, sched_getattr() failed with the error EFBIG if the in-kernel sched_attr structure was larger than the size passed by user space.  

関連項目


 chrt(1), nice(2), sched_get_priority_max(2), sched_get_priority_min(2), sched_getaffinity(2), sched_getparam(2), sched_getscheduler(2), sched_rr_get_interval(2), sched_setaffinity(2), sched_setparam(2), sched_setscheduler(2), sched_yield(2), setpriority(2), pthread_getschedparam(3), pthread_setschedparam(3), pthread_setschedprio(3), capabilities(7), cpuset(7), sched(7)  

この文書について

この man ページは Linux man-pages プロジェクトのリリース 5.10 の一部である。プロジェクトの説明とバグ報告に関する情報は https://www.kernel.org/doc/man-pages/ に書かれている。


 

Index

名前
書式
説明
sched_setattr()
sched_getattr()
返り値
エラー
バージョン
準拠
注意
バグ
関連項目
この文書について

This document was created by man2html, using the manual pages.
Time: 16:46:42 GMT, November 24, 2023