目次: Zephyr
Zephyrは開発中なので、ときおり内部構造が変わり、過去と互換性がなくなってしまうことがあります。ボードやSoCの定義も例外ではありません。
前回までの説明ではZephyr 2.1.0を使用していましたが、2.1.0から2.2.0の間で、ボードのdefconfigの書き方が変更されました。具体的に言うと、
下記のパッチにあるような変更をすると、2.2.0でもHogeボードとSpike SoCの対応が適用できます。
それぞれ1行ずつしか変更していませんので、すぐわかると思います。
ZephyrはLinuxと同じKconfigを採用していますが、コンフィグの起点に対する考え方がだいぶ違います。Zephyrは最初にcmakeで「ボード名(-DBOARDオプション)」を指定します。すなわちコンフィグの起点はボードです。一方のLinuxはexport ARCH=x86のようにアーキテクチャを設定の起点にします。
Zephyr 2.1.0では、アーキテクチャ(CONFIG_RISCVなど)、SoC(CONFIG_SOC_RISCV_SIFIVE_FREEDOMなど)、ボードの依存関係は下記のようになっていました。
アーキテクチャ(ボードのdefconfigがyにする)← アーキテクチャが依存の起点 ↑depends on SoC(ボードのdefconfigがyにする) ↑depends on ボード(ボードのdefconfigがyにする)← Zephyrはなぜかボードがコンフィグの起点
依存関係とコンフィグの起点が矛盾しているためmenuconfigが異常な動きをします。おそらくninja menuconfigを弄れば矛盾に気づくと思いますが、Zephyrはなぜかボードが未対応のアーキテクチャやSoC(例えばqemu_riscv32でCONFIG_ARMを選択できる)を有効にできます。Zephyr 2.1.0だと2つ、おかしな設定ができます。
実際にninja menuconfigで、qemu_riscv32が未対応のアーキテクチャを選ぶと下記のようになります。
# qemu_riscv32のデフォルト Modules ---> Board Selection (QEMU RISCV32 target) ---> Board Options ---- SoC/CPU/Configuration Selection (SiFive Freedom SOC implementation) ---> Hardware Configuration ---> RISCV Options ---> Architecture (RISCV architecture) ---> General Architecture Options ---> General Kernel Options ---> ... # ボードが対応していないアーキテクチャを選択すると、SoCが勝手に変わる、ボードは何も選べなくなる Modules ---> Board Selection ---- Board Options ---- SoC/CPU/Configuration Selection (LiteX VexRiscv system implementation) ---> ★なぜかRISC-V用のSoCが出てくる Hardware Configuration ---- Architecture (x86 architecture) ---> ★x86に変えた General Architecture Options ---> General Kernel Options ---> ...
そもそもx86が選択可能な時点でおかしいですが、x86を選択したのにx86じゃないSoCが選択肢に出てくるなど、かなりおかしな動きです。
Zephyr 2.2.0では依存関係は下記のように、少しだけ整理されました。
アーキテクチャ(SoCが強制的にyにする、menuconfigでは触れない) ↑select SoC(ボードのdefconfigがyにする) ↑depends on ボード(ボードのdefconfigがyにする)← ここが起点
アーキテクチャを変えることが出来なくなりました。前よりマシですが、やはり変なところは残っていて、未対応のSoCを選択するとボードの選択肢が消えてしまいます。
# qemu_riscv32のデフォルト Modules ---> Board Selection (QEMU RISCV32 target) ---> Board Options ---- SoC/CPU/Configuration Selection (SiFive Freedom SOC implementation) ---> Hardware Configuration ---> RISCV Options ---> ... # SoCを無理やり未対応のものに変えると、ボードが選べなくなる Modules ---> Board Selection ---- Board Options ---- SoC/CPU/Configuration Selection (LiteX VexRiscv system implementation) ---> Hardware Configuration ---- RISCV Options ---> ...
個人的にはZephyrのKconfigの使い方は変だな、と思います。依存関係があることはわかっているのだから、依存の根本の方から設定(要は、アーキテクチャ → SoC → ボード、の順)したら良いのに、Zephyrはなぜかボードの設定から固定していて、変な動きになっています。
Linuxはどうしているかというと、最初にexport ARCH=x86とします。すなわち、アーキテクチャを設定の起点にしています。自然です。特に変な動きもしません。
Zephyrの方がLinuxより後発ですが、ビルド周りは退化したように感じます。不思議。
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