コグノスケ


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2020年 1月 27日

クロスビルド用ツールチェーン - GCC 10.0 にしたらハマった

目次: GCC を調べる - まとめリンク

新し目の AArch64 のクロスコンパイル用ツールチェーンを作ろうとして、かなりハマったのでメモしておきます。

基本的には前回(2019年 4月 29日の日記参照)ご紹介した手順でビルドします。GCC と glibc のコードを変えなくて良い組み合わせは下記の通りです。特に新しいバージョンを使う理由がなければ、この組み合わせが無難です。

  • gcc: 8.3.0 (tag: releases/gcc-8.3.0)
  • glibc: 2.28 (tag: glibc-2.28)

私は新しい GCC が使いたかったので、HEAD にしました(バージョン的には 10.0 相当)。どうやら GCC のエラーチェックが厳しくなるらしく、glibc のビルドが通らなくなります。たくさんエラーが出ますが、一例を挙げると、下記のようなエラーです。

GCC HEAD (GCC 10.0 相当) で glibc 2.28 をビルドするとコンパイルエラー
./../include/libc-symbols.h:534:26: error: '__EI___errno_location' specifies less restrictive attributes than its target '__errno_location': 'const', 'nothrow' [-Werror=missing-attributes]
  534 |   extern __typeof (name) __EI_##name \
      |                          ^~~~~

エラーは glibc を新しくすると解決されるかと思いきや、よりおかしなことになります。例えば GCC 8.3 のまま glibc 2.30(おそらく 2.29 でも同じ症状が出る)にすると、下記のような変なエラーが出ます。

GCC 8.3 で glibc 2.30 をビルドするとリンクエラー
crosstool-builder-new-aarch64/buildroot/lib/gcc/aarch64-unknown-linux-gnu/8.3.0/../../../../aarch64-unknown-linux-gnu/bin/ld: crosstool-builder-new-aarch64/build/glibc/support/links-dso-program.o: Relocations in generic ELF (EM: 62)
crosstool-builder-new-aarch64/buildroot/lib/gcc/aarch64-unknown-linux-gnu/8.3.0/../../../../aarch64-unknown-linux-gnu/bin/ld: crosstool-builder-new-aarch64/build/glibc/support/links-dso-program.o: Relocations in generic ELF (EM: 62)
...

エラーの原因となっているオブジェクト links-dso-program.o を調べると、AArch64 向けにビルドしているにも関わらず、なぜか x86_64 用のオブジェクトが生成されています。

glibc/support 下に生成されたオブジェクト
build/glibc/support$ file *.o

echo-container.o:    ELF 64-bit LSB relocatable, ARM aarch64, version 1 (SYSV), with debug_info, not stripped
links-dso-program.o: ELF 64-bit LSB relocatable, x86-64, version 1 (SYSV), with debug_info, not stripped    ★★★★これ★★★★
shell-container.o:   ELF 64-bit LSB relocatable, ARM aarch64, version 1 (SYSV), with debug_info, not stripped
stamp.o:             empty
test-container.o:    ELF 64-bit LSB relocatable, ARM aarch64, version 1 (SYSV), with debug_info, not stripped
true-container.o:    ELF 64-bit LSB relocatable, ARM aarch64, version 1 (SYSV), with debug_info, not stripped

いったい何ですかね、これ。バグなのか、仕様なのかわかりません……。

GCC 10.0 と glibc 2.30 の組み合わせでビルドする方法

GCC と glibc をお互い最新にした組み合わせ、すなわち下記の組み合わせにしたとき、

  • gcc: 10.0 (HEAD)
  • glibc: 2.30 (tag: glibc-2.30)

先ほど説明した、両方のエラーに遭遇してビルドできませんので、glibc にパッチを当ててビルドエラーを回避します。

まずはコンパイルエラーを無視するパッチです。本来はエラーを無視するのではなく、エラーが指摘している事項を直すべきですけど、今回の主眼ではないのと、いずれ glibc 本家が直るだろうことを期待しておきます。

glibc のビルドエラーをあえて無視するパッチ

diff --git a/Makeconfig b/Makeconfig
index fd36c58c04..106688e210 100644
--- a/Makeconfig
+++ b/Makeconfig
@@ -916,7 +916,8 @@ ifeq	"$(strip $(+cflags))" ""
 endif	# $(+cflags) == ""
 
 +cflags += $(cflags-cpu) $(+gccwarn) $(+merge-constants) $(+math-flags) \
-	   $(+stack-protector)
+	   $(+stack-protector) \
+	   -Wno-zero-length-bounds -Wno-array-bounds -Wno-maybe-uninitialized
 +gcc-nowarn := -w
 
 # Each sysdeps directory can contain header files that both will be

次の links-dso-program はコミットログを見る限り、テストのサポート用ライブラリなので、とりあえず無くても動くはずです。ビルド自体をやめるパッチをあてます。

glibc の support/links-dso-program をビルドさせないパッチ

diff --git a/support/Makefile b/support/Makefile
index ab66913a02..19c3de2043 100644
--- a/support/Makefile
+++ b/support/Makefile
@@ -184,12 +184,12 @@ CFLAGS-support_paths.c = \
 		-DSBINDIR_PATH=\"$(sbindir)\" \
 		-DROOTSBINDIR_PATH=\"$(rootsbindir)\"
 
-ifeq (,$(CXX))
-LINKS_DSO_PROGRAM = links-dso-program-c
-else
-LINKS_DSO_PROGRAM = links-dso-program
-LDLIBS-links-dso-program = -lstdc++ -lgcc -lgcc_s $(libunwind)
-endif
+#ifeq (,$(CXX))
+#LINKS_DSO_PROGRAM = links-dso-program-c
+#else
+#LINKS_DSO_PROGRAM = links-dso-program
+#LDLIBS-links-dso-program = -lstdc++ -lgcc -lgcc_s $(libunwind)
+#endif
 
 ifeq (yes,$(have-selinux))
 LDLIBS-$(LINKS_DSO_PROGRAM) += -lselinux

クロスコンパイル環境は、各モジュールのバージョンアップですぐ壊れてしまって辛いです。ARM がこれだけ覇権を握っているにも関わらず、gcc も glibc もあまりチェックしてないんですかね……??

後日追記

わざわざ Makefile を書き換えなくても make LINKS_DSO_PROGRAM= のように、make 実行時に LINKS_DSO_PROGRAM 変数の値を強制的に空文字列に上書きすれば回避可能でした。理由は昔の日記で書いた通り(2019年 9月 17日の日記参照)、コマンドラインからの変数指定は Makefile 内の代入より強いからです。

Makefile 書き換えよりは多少スマートですけども、クロスコンパイルの時だけこんな指定が必要なのは妙ですね。まだ何か見落としているんでしょうかね?

編集者: すずき(更新: 2023年 3月 6日 17:07)

コメント一覧

  • superzeros 
    ARM64 target (cortexa53)と x86_64 host (Ryzen7)のクロスコンパイラのビルドで、当方にもご指摘のエラーがありました。で、そのパッチを拝借したところ、見事GLIBCのコンパイルが通りました。

    ありがとうございました!

    なんと申しましょうか、とても柔軟かつ大胆に繊細な対応をなされますね。

    補足:当方の各パッケージのバージョンは latest(2020-04-15)
    linux-5.6.4 (headers)
    gcc-9.3.0
    glibc-2.31
    binutils-2.34
    configure やBUILD手法は archlinux PKGBUILD と Cross LFS BOOK 等のWEB情報を参考にして適当にやっております(笑  
    (2020年04月15日 19:59:41)
  • すずき 
    コメントありがとうございます。お役に立ったようで良かったです。

    動作に支障無さそうなところだったので、かなり適当に変えてしまいました。

    大胆というか適当というか……。 
    (2020年04月15日 23:13:54)
  • superzeros 
    少し気になったのでglibcの履歴を調べてみたら・・・

    glibc-2.31/support/links-dso-program-c.c
    glibc-2.31/support/links-dso-program.cc

    このファイルは、2.29で最初に追加され

    \\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\

    #include <iostream>
    using namespace std;
    int
    main (int argc, char **argv)
    /* Complexity to keep gcc from optimizing this away. */
    cout << (argc > 1 ? argv[1] : "null");
    return 0;


    \\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\

    で、続いて2.30では

    \\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\

    #include <iostream>
    /* makedb needs selinux dso's. */
    #ifdef HAVE_SELINUX
    # include <selinux/selinux.h>
    #endif
    using namespace std;
    /* The purpose of this file is to indicate to the build system which
    shared objects need to be copied into the testroot, such as gcc or
    selinux support libraries. This program is never executed, only
    scanned for dependencies on shared objects, so the code below may
    seem weird - it's written to survive gcc optimization and force
    such dependencies.
    */
    int
    main (int argc, char **argv)
    /* Complexity to keep gcc from optimizing this away. */
    cout << (argc > 1 ? argv[1] : "null");
    #ifdef HAVE_SELINUX
    /* This exists to force libselinux.so to be required. */
    cout << "selinux " << is_selinux_enabled ();
    #endif
    return 0;


    \\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\

    2.29では、どういう経緯で誰によって導入されたのか、知りませんけど
    2.30では、SElinux(国家安全保障局)がどうたらこうたらの追加です
    誰のためになるんでしょうか ・・・

    自分の所有するハードウエアを自分で使いこなしたいだけのわたしからすれば
    バージョンアップに紛れ込んだオープンソースへの破壊活動みたいなもんですよ
    貴重な時間を奪われるところでしたが、おかげさまですぐに解決できてよかったです
    貴方に感謝いたします

      \(^o^)/
     
    (2020年04月16日 21:07:51)
  • すずき 
    詳細は調べていないので、コード中のコメントからの想像ですが……破壊活動というほどではないかなと思います。

    SELinux が有効なときは、SELinux のライブラリがないと動かないのでしょう。このヘルパープログラムは SELinux のライブラリを使っているから、ビルドシステムはテスト用の rootfs に SELinux のライブラリをコピーしてくれ、ということを示すための変更だと思います。 
    (2020年04月18日 23:05:39)
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2020年 1月 26日

C 言語の未定義動作と最適化

目次: C 言語と libc - まとめリンク

くそ長いですが、C 言語の未定義動作怖いね、printf でタイミング以外も動き変えられるよ、という話です。

環境ですが x86_64 向け Debian GNU/Linux 9.2 で実行しています。また GCC のバージョンは gcc (Debian 9.2.1-22) 9.2.1 20200104 です。

未定義動作のため、コンパイラの種類や、GCC のバージョンにより結果が変わると思われます。お家のマシンで試すならご留意ください。

1番目の実験

この日記の最後に貼ったプログラム(このプログラムをコンパイルすると、激しい警告が出ます)を gcc -Wall -O2 a.c && ./a.out のように実行すると、

1番目の実験: あれ?バッファオーバーランは…?
0: 0 0 0
1: 0 1 0
2: 0 2 0
3: 0 3 0
4: 0 4 0
...
47: 0 47 0
48: 0 48 0
49: 0 49 0
1770: 1770

こうなります。0〜59 の和は 1770 です。あってます。良かったですね。

なに?そういう問題じゃない?「なぜ array 終端を超えて guard2 にバッファオーバーランしない?」と考えた方、するどいです。しかし世の中そう単純ではありません。

2番目の実験

10行目の printf のコメントを外してローカル変数のアドレスを表示させると、

2番目の実験: 10行目の printf を有効、突然のバッファオーバーラン
0x7ffd9b348a10 0x7ffd9b348ae0 0x7ffd9b348bb0
0: 0 0 52
1: 0 1 53
2: 0 2 54
3: 0 3 55
4: 0 4 56
...
45: 0 45 0
46: 0 46 0
47: 0 47 0
48: 0 48 0
49: 0 49 0
1770: 1770

こうなります。突然オーバーランするようになりました。printf が何かしたんでしょうか、不思議ですね?

3番目の実験

どうして for ループを無意味に 2分割したのか?くっつけてみたらわかります。Segmentation Fault します。

3番目の実験: ループを 1つにするとクラッシュ
0: 0 0 0
1: 0 1 0
2: 0 2 0
3: 0 3 0
4: 0 4 0
...
45: 0 45 0
46: 0 46 0
47: 0 47 0
48: 0 48 0
49: 0 49 0
Segmentation fault

もう意味不明ですよね。何が起こっているんでしょう?

タネ明かし

この 60回の for ループは「配列の終端を超えたアクセス」が C 言語仕様上の未定義動作なので、何が起きても正しい、つまりどの結果も正しいです。

これだけだと、何言ってんのか意味不明だと思うので「printf 有効/無効」「for ループ 1つ/2つ」に着目して説明します。

1番目の実験(printf 無効、for ループ 2つ)
プログラムを見ると guard1, guard2 に対して memset 0 した後、参照のみで代入しません。コンパイラは guard1, guard2 をスタックに配置せず、配列への参照(guard1[i], guard2[i])は全て「定数の 0」に置換します。
(GIMPLE を見たら 033t.fre1 で 0 に置換されるようです)
このとき array のバッファオーバーランはスタックに退避されているレジスタ値などを書きつぶしますが、ギリギリ続行できています。
2番目の実験(printf 有効、for ループ 2つ)
1番目と変わりないと思いきや、printf が guard1, guard2 のアドレス参照をするため、定数の 0 に置換すると返せるアドレスがなくなり結果が変わってしまいます。このため、guard1, guard2 はスタックに配置されます。
このとき array のバッファーオーバーランは隣に配置された guard2 を書きつぶします。
3番目の実験(printf 無効、for ループ 1つ
いわゆる偶然の結果です。1番目と同様に guard1, guard2 はスタックに配置されず、array のバッファオーバーランによりスタックに退避したレジスタ値などが壊れます。for ループが 1つ減ったことでスタックに退避されるレジスタが 1つ減って(8バイト分余裕がなくなる)、1番目の実験でギリギリリターンアドレスを壊されずに耐えていたものが、耐えられなくなります。

3番目の実験の裏打ちとして、試しにループ回数を 80回くらいにすると for ループが 1つだろうが 2つだろうが、リターンアドレスがぶっ壊れて Segmentation Fault します。10行目の printf を有効にすると guard1, guard2 がスタックに配置されて、受け止めてくれるので、80回でも耐えます。

難解な C 言語仕様、曖昧な利用者の理解、過激なコンパイラの最適化、が招く結末

バッファオーバーランを期待していた向きには残念(?)かもしれませんが、guard1, guard2 はメモリ上に置いても置かなくても、C 言語仕様に矛盾しないなら、どっちでも良いです。もっというと C 言語仕様に矛盾しないなら、コンパイラの最適化は何をやっても OK です。

この「C 言語仕様に矛盾しないなら」はおそらくコンパイラ開発者には常識なのでしょうけども、C 言語の仕様は人間に優しくないのと、大多数の C 言語プログラマは言語仕様(特に未定義動作)を理解しておらず、何となく使っています。

難解な仕様、曖昧な理解、過激な最適化の相乗効果により、今日も世界のどこかで
「最適化で動きが変になっちゃったよ……。どうして…どうして……?」
とコンパイラとすれ違ったプログラマが泣いているでしょう。。。

参考

大したものではありませんが、ソースコードを載せておきます。

実験用ソースコード

#include <stdio.h>
#include <string.h>

int undefined()
{
	int guard1[50];
	int array[50];
	int guard2[50];
	int sum = 0, i;

	memset(guard1, 0, sizeof(guard1));
	memset(guard2, 0, sizeof(guard2));
	//printf("%p %p %p\n", &guard1[0], &array[0], &guard2[0]);

	for (i = 0; i < 60; i++) {
		array[i] = i;
	}

	for (i = 0; i < 60; i++) {
		sum += array[i];
	}

	for (i = 0; i < 50; i++) {
		printf("%2d: %d %d %d\n", i, guard1[i], array[i], guard2[i]);
	}

	return sum;
}

int main(int argc, char *argv[])
{
	int sum1 = 0, sum2 = 0, i;

	sum1 = undefined();

	for (i = 0; i < 60; i++) {
		sum2 += i;
	}

	printf("%d: %d\n", sum1, sum2);

	return 0;
}
編集者: すずき(更新: 2023年 2月 4日 20:17)

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2020年 1月 21日

glibc の memset は強かった

目次: memset を調べる - まとめリンク

先日(2020年 1月 12日の日記参照)の続きです。

あまりにも glibc フルアセンブラ版 memset の実装が速くて勝てないので、観念して実装を見たのですが、序盤(1バイト〜32バイト)が弱い理由と、以降(33バイト〜)で勝てない理由がわかりました。

他の実装と違って glibc はサイズの大きい方から条件を見ています。どうしても条件分岐命令を通る回数が増えるため、序盤に弱いです。

中盤は 96 バイトまでは NEON store x 4 と分岐で捌いていて、ループを使いません。分岐も cmp して branch ではなく、ビットセットされていたら分岐する命令(tbz, tbnz)を使っています(※)。

つまり私が書いた memset はループで処理している時点で、ほぼ勝ち目がなかったということです。

グラフでは 63バイトまでしか測っていなかったから気づかなかったのですが、ループの 2週目に入る 65バイトから、さらにボロ負けです。いやはや、これは勝てないですね……。

(※)cmp, branch の 2命令を tbz 1命令にする辺り、AArch64 アセンブラならではの実装に見えますが、実は C でも if (a & 0x10) とか書くとコンパイラが tbz 命令を使います。コンパイラ侮りがたし。

編集者: すずき(更新: 2021年 5月 31日 01:11)

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2020年 1月 20日

glibc の memset のクセ

目次: memset を調べる - まとめリンク

先日 memset を書いていたとき(2020年 1月 12日の日記参照)に気づいたのですが、glibc のフルアセンブラ版 memset の性能が 2通り(遅い、速い)あることに気づきました。だいたい 1割くらい性能が変わります。

遅いときと比較すると、自作の memset の方が速いですが、速いときと比較するとボロ負けします。割と性能が迫っているためか、影響が大きいです。

何が違うんでしょうね?コードは当然同じですから、違いは memset 関数のロードされるアドレスくらいです。まさかなと思って、スタティックリンクしたら安定して速くなりました。

ダイナミックリンクだと、アプリ側は 0xaaaac4fba560 で、glibc だけ 0xffffbf2dce00 のような遠いアドレスに飛ばされます。ベンチマーク中は、アプリのコード ←→ glibc のコードを頻繁に行き来することになるので、TLB ミスヒットの影響が出ているんですかね……??

真因はわかりませんが、アドレスが関係している可能性は高いです。今後、似たようなことをやるときは、スタティックリンクで測った方が良さそうです。

編集者: すずき(更新: 2021年 5月 31日 01:14)

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2020年 1月 19日

バイトをコピーする SIMD 命令

目次: memset を調べる - まとめリンク

最近、見かける SIMD 命令セット(AVX も NEON も)には、レジスタ下位 [7:0] の 1バイトを、レジスタ上位 ... [31:24] [23:16] [15:8] の各バイトに配る命令が用意されています。

  • AVX: vpbroadcastb
  • NEON: dup

この命令はどういう需要があるんだろうか……?memset の実装では超役に立ちましたが、他の使い道が良くわかりません。

Facebook で上記の話をしていたところ、

  • 8bit 行列演算: 8bit 行列演算ってそんな頻出かな、って思ったら、画像使えば 8bit なので十分有り得そう。
  • バイト暗号: ブロック毎に空間変換する時とか雑に言えばスカラとベクトルの演算。

と教えてもらいました。なるほど、スカラベクトル積のスカラ側を配るときに便利ですね。

SIMD 命令のない世界

ちなみに SIMD のない処理系はどうしているのか見てみると、


int a = (何かの数字);

としたときに、


a &= 0xff;
a *= 0x01010101;

のように and, mov, mul を使っていました。もちろん、


a &= 0xff;
a |= a << 8;
a |= a << 16;

のように and, shift, or, shift, or でもできますが、今日日のプロセッサだと整数乗算の方が速そうですね。

編集者: すずき(更新: 2023年 2月 4日 20:09)

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