以前Googleが検索するという意味で「ググる(google something)」と言わないでくれなんて声明を出していました。世論は、せっかくGoogleというブランド名が定着したのに、なぜ邪魔するの?Googleだって嬉しいくせに!!という意見が見受けられました。
しかし実際は全く逆でして、Googleは全く嬉しくありません。一般の単語にされるとむしろGoogleは迷惑なのです。これはGoogleという商標(登録 第4478963号、国際登録番号881006)が何のためにあるのかを考えるとわかります。
商標とは「商品やサービスを見分けるための標識を独占的に使用できる権利」です。Googleという商標が付いていれば「これはGoogle社が提供していて、他の何者でもない」、「Google社の提供する品質を持っている」という点が容易に理解できます。
その役目を果たすためには、Googleという標識はGoogle社しか使えないようにしなければなりません。もし無断で商標を使用する者がいれば、Google社はその会社を訴えて、使用をやめさせることができるのです。
商標は有名になってなんぼ(同様に自社の商品も有名であることを意味するから)ですが、あまりに広まりすぎて一般の単語と同様になってしまうと、商標が取り消されたり、期間を延期できなくなります(商標法 第46条、第47条)。これは商標法 第3条1.(※)の6. にある「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」に該当するため、でしょうか?ちょっと自信ないです。
例えば、全ての英語辞書に「google = (インターネットで)何かを検索する」という意味で載ったとすると、googleはsearchやfindと同様の普通の単語になってしまいます。つまり一般動詞になってしまったわけです。
一般動詞になれば、利用者がGoogleという単語を見ても「検索する」という意味しか浮かばず、Google社のサービスであることが認識できません。
「え、GoogleってGoogle社の提供するサービスなの?」
と言われるようでは、もはやGoogleという商標が、商標の役目を果たしていない状態と言えます。されば取り消されて当然と言えます。
よくわからん、っつう人はGoogleを「検索」あるいはもっとわかりやすく「飴」に置き換えるとわかりやすいです。
「飴」という商標を許せば、「飴」を使えるのは世の中で一社だけになります。これは一般の単語の利用を禁止するのとほぼ同様です。「飴」だけならまだしも、他の会社も同様に一般単語を登録し始めれば、そのうち商品に使える一般単語はなくなってしまいます。
法律は社会の維持のためにあるものですから、上記のように社会のバランスを崩す状況に陥る状況を許しません。そのためには一般単語(またはそうみなされるもの)は使えないようにするのが自然、ということですね。
というわけで、あまりに有名になりすぎてGoogleが商標を取り消されてしまえば、Google社はgoogle以外のブランドを新たに立ち上げなければならなくなります。また、他社からgoogleなんとかが山のように出てきて、自社の製品が埋没し、大損することは請け合いです。
だからGoogle社は必死になって一般動詞化を阻止しているのです。
いやいや、そんなこと心配するだけ無駄、って思いますか?でも実際にあるんですよ。
例えば、株式会社イトーキの「ホッチキス」です。かつてはイトーキの登録商標だったそうですが、現在は登録商標に存在しません。N○Kみたいにわざわざステープラーって言い直してる人が居ますが、んなことしなくて良いんです。
ちなみに現在、ホッチキス風の商標は、マックス株式会社の「HOTCHKISS」(紙綴り器)か、キヤノン株式会社の「ホッチキス」(理化学機器、その他)のみです。マックスはまだしも、キヤノンのホッチキスって何に使うのかな…。
(※)商標法(第3条の1.)
自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については、次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる。
1.その商品又は役務の普通名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
2.その商品又は役務について慣用されている商標
3.その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、数量、形状(包装の形状を含む。)、価格若しくは生産若しくは使用の方法若しくは時期又はその役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、数量、態様、価格若しくは提供の方法若しくは時期を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
4.ありふれた氏又は名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
5.極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標
6.前各号に掲げるもののほか、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標
(以下略)
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